司馬遼太郎記念館

財団について

フェローシップ

開館カレンダー

休館日

開館時間:10:00~17:00
(入館受付は16:30まで)

休館日:毎週月曜(祝日の場合は開館し翌日休館)、9/1~9/10、12/28~1/4

TEL:06-6726-3860

FAX:06-6726-3856

入館料:大人500円、高・中学生300円、小学生200円(20名以上の団体は入館料が2割引)

司馬遼太郎フェローシップ

フェローシップFELLOW SHIP

  • ■司馬作品にインスピレーションを得た知的な企画に奨励金を贈ります。
  • ■応募資格は満16歳から25歳まで。
  • ■奨励金は30万円。1年かけて企画を実行します。

過去の
企画には

  • ■絵画の中のイエス・キリストはいつから座っているか?
  • ■日本の食文化がロシアでどのくらい普及しているのか?
  • ■中国少数民族の絵を描きに雲南省へ
  • ■『草原の記』をモンゴル語の劇にして上演する
  • ■フィリピンのストリートチルドレンの現状は?
  • ■滋賀県の里山でフィールドワーク、その将来像を考える

これまでのフェローシップ企画

世界 WORLD

第6回 高橋宏幸

第10回 赤川裕紀

第4回 松尾一郎

第11回 小磯匡大

第7回 権義文

第1回 本間新

第2回 佐野一道

第19回 沈韻之

第1回 李里花

第15回 岩見有希子

第14回 山﨑典子

第4回 西條博子

第9回 谷明憲

第12回 鈴木愛瑠

第16回 伊藤遥

第16回 東康太

第7回 佐野尭

第8回 涌井健策

第18回 石井宏樹

第13回 川本悠紀子

第3回 長谷川悠里

ニューヨークの橋を渡って、美しい都市景観の秘密を探る旅

企画タイトル:「橋と都市」ブルックリン橋とニューヨーク

第10回 赤川さん
(受賞時・大学4年生)

応募のきっかけは?
司馬作品の文庫本の最後ページに司馬遼太郎記念館のことが書いてあったのを見つけました。
インスピレーションを得た作品は?
『アメリカ素描』、『街道をゆく39 ニューヨーク散歩』

ニューヨークのブルックリン橋(アメリカ・ニューヨーク/2007年)

企画の着想はどこから?
卒業旅行でニューヨークに行きたいと思い、司馬さんの作品でニューヨークを扱った作品を読みました。特に、『街道をゆく39 ニューヨーク散歩』を読み、ブルックリン橋を渡りながら、全世界の歴史を縦横無尽に語り、日本の未来と真剣に向き合う司馬さんへの憧れが生まれました。自分もその足跡を自分なりにたどりたいと思いました。
受賞後の心境、生活の変化は?
現在、フェローのOB・OGを集めて、「司馬遼太郎フェローシップの会」(「フェローの会」)を作りました。新聞社で営業の業務をする傍ら、その代表を務めています。今後は、このフェローの会の活動が後進たちにうまく引き継がれていくよう、諸事整えていきたいです。
応募を考えている皆さんへ
受賞当時はまだ若かったこともあり、見聞きすることの全てが新鮮で、司馬さんの本を中心にいろんな分野の本を読み、旅行し、友人と楽しく遊んでいたら、司馬さんとのご縁が自然にできたという感じです。ですので、難しく考えず、自分の好奇心の赴くままに妄想を膨らませて、まとめてもらえればいいと思います。
司馬作品との出会いは
出身大学の生協で。学生時代、お金がなく、外出して遊ぶことができませんでした。そんな中、お金をかけずに遊ぶ手段として、読書をよくしていました。そんな折、大学生協で司馬さんの『燃えよ剣』を手に取ったことがきっかけでした。
おすすめの司馬作品は?
『関ヶ原』
関ヶ原の合戦をテーマに人間の本質をえぐり出した渾身の作品。学生時代に勉強していた国際政治学の大家である故・高坂正堯先生があとがきを書いておられるなど、身近に思え、忘れられない一冊で何度も読み返しています。特に、豊臣方の武将たちの生き方に心惹かれます。

シベリアでアイヌの儀礼の源流を探る

企画タイトル:ユーラシア北東部狩猟民の神話的思考
――クマ送りを例に

第11回 小磯さん
(受賞時・高校教員)

応募のきっかけは?
アルバイト先の本屋で手にした「週刊朝日」だったと思います。
インスピレーションを得た作品は?
『街道をゆく41 北のまほろば』
企画の着想はどこから?
旅が好きで、当時は『街道をゆく』を座右に各地を巡っていたことから、『北のまほろば』で示唆されたアイヌの文化とシベリア先住民の文化を比較してみたいと思ったのがきっかけです。

シベリア鉄道の夕暮れ
(ロシア・チタ周辺/2008年)

受賞後の心境、生活の変化は?
原発事故で私のふるさとが警戒区域になり、司馬さんの『二十一世紀に生きる君たちへ』の示唆を踏まえた「ネフスキーさん!」という小説を執筆しました。2017年に福島県文学賞を受賞しました。
応募を考えている皆さんへ
『風塵抄』で司馬さんは言いました。「世界と社会ほど面白いものはない」と。皆さんの人生の面白さのために、司馬遼太郎財団の力を借りてみませんか?

弓道部顧問として、生徒とともに。

司馬作品との出会いは
『この国のかたち』。花見の場所取りのため、ブルーシートに寝ころびながら、荻生徂徠や朱子学についての論考を読んだことが記憶に残っています。そのあとは『街道をゆく』です。
おすすめの司馬作品は?
『空海の風景』
四国遍路を歩きながら読み、空海ファンになりました。最初に読んだ司馬小説でもあり、「小説なのに作者が登場してエピソードを語っている!」と驚きました。

横臥から着座へ、その理由とは?

企画タイトル:『最後の晩餐』の図像を読み解く
―イエスはいつ座ったか

第13回 川本さん
(受賞時・大学院生)

応募のきっかけは?
上智大学新聞で第11回フェローの堅田智子さんがフェローシップを受賞されたことを知りました。以前から探求したいテーマがあったため、応募することにしました。
インスピレーションを得た作品は?
私には以前から探求したい研究テーマがありました。そこから、司馬先生の作品との接点を考えましたが、この研究テーマに関連した本はありませんでした。一方で、様々な史資料を用いて歴史を紐解く司馬さんのご執筆姿勢はまさに私が行おうとしていた・行っていた研究に通じるところがありました。具体的な作品からではありませんが、インスピレーションを様々な作品から得ました。

3カ月研究滞在したBritish School at Romeにて(イタリア・ローマ/2016年)

企画の着想はどこから?
ラヴェンナのモザイクの「最後の晩餐」のモザイクではイエスや十二使徒が寝転がっているのに、なぜレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」ではそうではないのだろう、いつから絵画表現が変わったのだろうと興味を抱きました。この素朴な疑問に対する答えを模索したいと思い、応募を決めました。
受賞後の心境、生活の変化は?
現在は、名古屋に研究拠点を置きながら、ポンペイでの発掘や、ミュンヘンやロンドンでの資料調査・研究も続けています。受賞から10年が経ちましたが、史資料を用いて古代ローマの文化史・社会史を研究する姿勢は今なお変わっていません。
応募を考えている皆さんへ
ご自身が知りたいこと、面白いと感じるものを大切にしてください。

Stone Curvingの体験(イタリア・ローマ/2016年)

司馬作品との出会いは
司馬作品との最初の出会いは父の書棚で、最初に手にしたのは『竜馬がゆく』だったと思います。ただ、父を凌ぐ司馬さんファンは昨年亡くなった祖母です。身の回りの整理で雑貨・本類を殆ど処分していたのですが、司馬さんの著書ならびに「週刊朝日」の司馬さん特別号や孫が時折登場する「遼」は最後まで手元に残していました。祖母の司馬コレクション(『街道をゆく』も全巻揃っています)は、今は実家の書棚に収められています。
おすすめの司馬作品は?
『坂の上の雲』
明治に生きた人々の逞しさ、列強に並び立とうと懸命に努力する姿勢を感じるとともに、「この時代は面白いことがたくさん起きたのだろう!なんて生き生きとしていて、魅力的な時代なのだろう!」と思いました。そんな明治の魅力に最初に触れたのはこの作品です。

「細菌学の父」ロベルト・コッホと妻に仕えた日本人を追って

企画タイトル:「はな」-明治の時代精神を体現した女性の研究

第7回 佐野さん
(受賞時・大学1年生)

応募のきっかけは?
司馬遼太郎記念財団のホームページ
インスピレーションを得た作品は?
『胡蝶の夢』
企画の着想はどこから?
『胡蝶の夢』で興味を持ち、個人的に明治の医学を題材にした作品をいろいろ読んでいました。そのひとつ、山崎光夫著『ドンネルの男・北里柴三郎』という小説に一箇所だけ登場していた「コッホに仕えたハナ」という女性について興味を持ったことがきっかけです。また、医学史の知識や大学で学習したドイツ語が活用できるのではないかと考えました。
受賞後の心境、生活の変化は?
受賞から15年ほど経ちました。大学1,2年時は時間に余裕があったので、フェローシップの研究活動に打ち込みました。その後、専門および大学病院での臨床期間中は、ひたすら課題との戦いでした。臨床が終わった今は、やっと落ち着いて自分のしたい研究をし、読みたい本を読める環境にいます。『胡蝶の夢』の司馬凌海のように、様々な外国語にも挑戦中です。
応募を考えている皆さんへ
好きな司馬遼太郎作品を読みつつ、心の片隅に「司馬遼太郎フェローシップ」ということばを置いてください。ふとしたきっかけで、研究テーマが浮かんでくることがあるかもしれません。迷わず応募してください。

コッホ研究所にて、コッホ胸像と(ドイツ・ベルリン/2004年)

司馬作品との出会いは
もともと実家に、『十一番目の志士』『幕末』『夏草の賦』『戦雲の夢』『街道をゆく』『この国のかたち』などがあり、ある程度は読んでいましたが、高1の夏休みの時期に読んだ『燃えよ剣』で完全に魅了されました。その後、図書館で全集を借りては読む日々が続きました。
おすすめの司馬作品は?
『関ヶ原』
映画化された機会に再読をすると、大勢の大名や武将が登場しているのに驚き、また、それらの人物像の多くが、この本により作られたのではないかと思わされました。これが約半世紀前の作品とは驚かされます!

歩き遍路で四国一周後、『空海の風景』の文学碑を訪ねました(高野山/2017年)

〝アート系NPO〟の活動を知るためにアメリカへ

企画タイトル:地域からの創造-パブリックシアターの研究について

第6回 高橋さん
(受賞時・大学生)

応募のきっかけは?
図書館付近で募集のポスターを目にしたからだと思います。当時は、大学院生でしたので、毎日、朝から晩まで図書館にいて、本を読むという幸せな時間を過ごしていました。そこで応募書類も書いたと思います。
インスピレーションを得た作品は?
街道をゆくの『ニューヨーク散歩』。ただ、むしろそこからインスピレーションを受けたというよりも、行いたい企画と『ニューヨーク散歩』を結びつけたといった方がいいかもしれないです。
企画の着想はどこから?
90年代後半から2000年代前半にかけては、ちょうどアーツマネージメントという言葉の流行とアート系NPOや自治体が公共劇場を設立する時期でした。新しい分野とその未来を模索するためには、図書館にある書物を読むだけでは限界があるなと思っていました。
受賞後の心境、生活の変化は?
企画を遂行して、なにかしらの成果を得なくてはいけないと、受賞後にプレッシャーを感じました。生活の変化は、ニューヨークに三ヶ月滞在したことでしょうか。アポイントメントをとって様々な人に話を聞こうと、世界的に著名なアーティストにも、メール、ファックス、電話で交渉するという、おそれしらずというか、今では逆にできないことに挑戦したように思います。そこで、アメリカという国は、一度はだれにでもチャンスをくれるということを知ったのもいい経験でした。
応募を考えている皆さんへ
とりあえず、書いて出すのがいいかと。〆切厳守で。

アメリカ、アリゾナ州のグランドキャニオンで(2013年)

司馬作品との出会いは
家の本棚にあったので自然と読んでいました。小学生のときに『殉死』を読んで、衝撃を受けたのは今でもよく覚えています。乃木希典という人自体を知らなかったので、強烈な印象でした。
おすすめの司馬作品は?
『峠』

       

近代の日本と中国、女子教育の違いをさぐる

企画タイトル:「華族女学校と振華女中から見る中日近代女子教育」

第19回 沈さん
(受賞時・大学生)

応募のきっかけは?
北京語言大学時代にできた日本人の友人から勧められたことです。
インスピレーションを得た作品は?
『坂の上の雲』を読んだ際に、日本と中国における近代の女性教育のあり方の違いに、疑問を覚えたことです。
この作品には、女性の登場人物があまり出てきません。しかも、テレビドラマ版では、秋山真之の妻・季子の通う華族女学校(1885年創立)の描写を通じて、良妻賢母の女性が良しとされた「時代思潮」が視覚化されていました。

一方、同時代の中国を代表する女学校としては、江蘇省蘇州に振華女中(1906年創立※日本で置き換えると女子の中高一貫校)があります(私はその後身の中学・高校の出身です)。
企画の着想はどこから?
清朝末期以降の中国では、女性を旧式家庭の束縛から解放することを方針とした女性教育がなされており、こうした両国の〝女性教育方針〟の違いはなぜ生まれたのか、知りたくなりました。
受賞後の心境、生活の変化は?
北京語言大学時代に、昭和天皇の晩餐の献立に関する資料翻訳に携わったことがあります。このことをきっかけに、食文化の歴史にも興味を持ちました。
さらに、海外では学術的なレベルで食文化の歴史がどのように捉えられているのか、だんだん気になっていきました。その後、関西外国語大学へ留学していた時期に『天皇家の饗宴』という本と出会い、興味関心を深めました。現在は「表象研究」という学問的分類のもとで、「(日本における)食と戦争の関わり」に特化した研究を進めています。

かつて、日本の女学校には料理教育の時間がありました。婦人雑誌には良妻賢母をにおわせる女性たちの写真がふんだんに使われ、戦時における士気向上の目的で、主婦のイメージが利用されていたのです。ジェンダー問題という枠組みにおいて、フェロー時代の研究は、現在の私の研究テーマと深くつながっています。

特攻隊員の「母」鳥濱トメの富屋食堂にて(知覧/2017年)

応募を考えている皆さんへ
正式な論文ではないので、興味本位でいろいろできるところが司馬遼太郎フェローシップのいいところ。学びの機会を与えてくださり、本当に感謝しています。
司馬作品との出会いは
3年次より留学した関西外国語大学で、「坂の上の雲」の小説・ドラマと、触れたこと。
おすすめの司馬作品は?
『坂の上の雲』、『ひとびとの跫音』
感覚的な言い方になりますが、小説でありながら、ドラマチックな『坂の上の雲』よりも穏やかな筆致で、静かに時が流れている印象を受けるところが好きです。

  

『草原の記』をモンゴル語で劇化

企画タイトル:モンゴル語劇 草原に帰る日

第2回 佐野一道さん
(受賞時・大学生)

応募のきっかけは?
菜の花忌で、第1回フェローシップの受賞式を目の当たりにして、この企画はフェローシップのねらいに適うのではないかと感じました。
インスピレーションを得た作品は?
『草原の記』、『街道をゆく モンゴル紀行』

『草原の記』を題材にモンゴル語で上演(大阪/1999年)

企画の着想はどこから?
在籍していた大阪外国語大学(現・大阪大学)では、学園祭で各専攻語による「外国語劇」が披露されていました。モンゴル語専攻として、大先輩である司馬さんの作品を劇にしようと考えました。
受賞後の心境、生活の変化は?
私は司馬作品の愛読者でしたが、受賞を経て、司馬さんの思いを一緒に担おうという担ぎ手の一員になる気概をもちました。報道機関に携わり、その後、教育の道に進んだのも、その延長線上にあるように感じます。
応募を考えている皆さんへ
司馬さんの作品に心を動かされ、励まされ、思い立った若者は多くいらっしゃると思います。フェローシップは、その挑戦を応援してくれます。

『草原の記』のヒロインであるツェベクマさんとも会い、上演への思いが溢れた(モンゴル/1998年)

司馬作品との出会いは
『項羽と劉邦』 中学生のころ、父親の本棚から借りました。古代中世の中国の本質が分かりやすく記され、歴史を俯瞰的にとらえることができることに感動しました。
おすすめの司馬作品は?
一冊ではないのですが、『街道をゆく』シリーズです。日本の土地土地に歴史と伝統が息づいていたころの情景とその歴史的背景を書き残してくださっているように感じます。

新聞記者を経て、現在は東京都内の公立小学校で教鞭をとる。

日米のマイノリティの違いは何か?

企画タイトル:日本とアメリカのコリアン移民のアイデンティティ比較

第1回 李里花さん
(受賞時・大学院生)

応募のきっかけは?
新聞に掲載されたフェローシップ募集の広告を友人が私に渡してくれました。当時大学を卒業して、進路に迷っていた時期だったので、進路はともあれ、一度自分がやってみたいことを探求してみたいと思い、応募しました。
インスピレーションを得た作品は?
『街道をゆく』
企画の着想はどこから?
応募する以前から日本とアメリカの移民マイノリティの知り合いはいましたが、その人の生い立ちや生き様について深く話しを聞くことには躊躇いがありました。フェローシップの募集を見たときに、これを機会にきちんと話を聞いてみたい、記録に残したい、何か貢献したいと思い、企画を考えてみました。
受賞後の心境、生活の変化は?
企画したことを、フェローシップ終了後もどのように活かすことができるだろうか、ということをよく考えるようになりました。それから本屋さんで「司馬遼太郎」という名前が入った本がよく目に入るようになりました(笑)。
応募を考えている皆さんへ
生きていく上でどうしても答えを見つけたいものがもしあったら、挑戦してみてください。
司馬作品との出会いは
最初に読んだ本は、中学生の時に読んだ『竜馬がゆく』でした。時代が大きく変わろうとしている時に、人はどんな反応を示すのか、そして何を思うのか、、、、。「人」という視線から歴史的変遷をみていくことの面白さを教えてもらったように思います。
おすすめの司馬作品は?
『故郷忘れじがたく候』
日本や朝鮮半島を含め、近代になると国と国の違いが大事になってきますが、もともと東アジアやアジアの人びとがどのように世の中をみていて、何を想い、いかなる交流をしてきたのか、多くのつながりの中に東アジアの地域の歴史があることを発見させてくれる一冊だと思います。
日本 JAPAN

第15回 井上茉耶

第11回 堅田智子

第14回 海野大和

第3回 守屋靖裕

第22回 西島春乃

第20回 谷倖帆

第19回 西脇祥子

第1回 瀬川智子

第17回 曽我しずく

第10回 菅恵

第21回 西脇彩央

第3回 柏木舞子

第6回 須藤義人

〝伝統的でない〟聖像画の真価を知るために

企画タイトル:「ロシア正教徒の目から見る山下りんのイコン」

第15回 井上さん
(受賞時・大学3年生)

応募のきっかけは?
「公募ガイド」という雑誌の学生向け公募企画のページで見た募集要項に興味を抱き、更に記念館のホームページに掲載されていた先輩方の企画を見て「自分もこういうことをやってみたい」と強く思ったのがきっかけです。
インスピレーションを得た作品は?
『街道をゆく33 奥州白河・会津のみち』

伝統的なロシア・ビザンチンスタイル
のイコン(2010年/ロシア)

企画の着想はどこから?
『街道をゆく33 奥州白河・会津のみち』で知った明治の日本人イコン(聖画)画家・山下りんのイコンに触れ、「この西洋画のようなイコンは実際の信仰の中ではどのように捉えられているのか」という疑問が出発点でした。
受賞後の心境、生活の変化は?
研究の取材を通じ、「自分も信仰を持った人々のように、生きた経験から物事を考えることのできる人間になりたい」と思うようになりました。この経験が「現場職に就きたい」という卒業後の進路決定へつながったと感じています。
応募を考えている皆さんへ
フェローシップの醍醐味は、受動的な生活の中では決して得られない貴重な経験ができる点にあると思います。ぜひ、一念発起して知らない世界の旅へ挑戦してみてください。

取材先の日本の正教会の神父様から頂いた携帯用のイコン

司馬作品との出会いは
祖父の書架に『梟の城』や『菜の花の沖』が並んでいるのは小学生の頃から目にしていましたが、実際に手に取り読み始めたのは企画の着想を得るために手にした大学図書館の司馬遼太郎全集や講演集が最初でした。
おすすめの司馬作品は?
『二十一世紀を生きる君たちへ』

やさしさやいたわりは本能ではない。だから私たちは、訓練してそれを身につけなければならない―。私は今、介護福祉士として高齢者福祉の現場で働いていますが、作中に綴られているこの言葉の重みを日々実感しています。

「相手の痛みを感じる」には、立場の違いから生じる負の感情を堪え、相手の苦しみを想像する必要があります。しかし、それができれば自身の無理解から来る苛立ちや怒りを抑えられるだけでなく、正しい判断の指針を得ることもできます。司馬さんがこの作品に託した願いは、私達が二十一世紀を良く生きるための助言でもあると思います。

自分のルーツを探す旅へ

企画タイトル:「ザビエルや信長から連想する近江の『堅田』」

第11回 堅田さん
(受賞時・大学2年生)

応募のきっかけは?
「週刊朝日」に掲載されていたフェローシップの募集記事を見て、応募しました。
インスピレーションを得た作品は?
『街道をゆく22 南蛮のみちⅠ』、『街道をゆく1 湖西のみち』

フランシスコ・ザビエルの生まれたハビエル城(スペイン・ハビエル/2007年)

企画の着想はどこから?

大学1年の春休みに、大学主催のツアーでフランシスコ・ザビエルの生誕地ハビエル(スペイン・バスク地方)を訪れ、『街道をゆく22 南蛮のみちⅠ』を追体験できました。

ふと、みずからのルーツに思いをめぐらせ、『街道をゆく1 湖西のみち』に登場しないものの、織田信長が琵琶湖の要所と位置づけた堅田という土地について調査したいと考えました。

受賞後の心境、生活の変化は?

博士号を取得し、現在は大学で教壇に立ちながら、専門である明治・大正時代の日独関係史、シーボルトの息子、アレクサンダー・フォン・シーボルトについて研究をしています。

受賞から10年が経ち、司馬さんと旅をした編集者の方と出会い、歴史学者として仕事をご一緒することができました。司馬さんとの奇縁を感じずにはいられません。

アレクサンダー・フォン・シーボルト研究を広めるべく、大学以外でも講演
(ドイツ・ベルリン/2015年)

応募を考えている皆さんへ
「知の世界への探求」を応援してもらえるフェローシップは、自分自身の考えや思いと真正面から向き合う絶好の機会だと思います。「今、何をしたいのか」大いに悩み、「あなたらしさ」を表現してみると、その先に新しい世界が見えるはずです。
司馬作品との出会いは
自宅の本棚に、父の蔵書として司馬作品が並んでいました。高校の時、芸術鑑賞で舞台「燃えよ剣」を鑑賞することになり、予習のために原作を読んだのが最初です。
おすすめの司馬作品は?
『坂の上の雲』
一瞬一瞬を全力で生きようとする日本人の気骨に圧倒されます。『「明治」という国家』とともに、「日本人とは何か」、「日本という国家とは」という問いと向き合うことができる作品だと思います。

「維新の青年」の夢を追いかけて

企画タイトル:横井大平と熊本洋学校~歴史に埋もれた礎を探る~

第21回 西脇さん
(受賞時・大学生)

応募のきっかけは?
大学の掲示板に貼られていたポスター。ちょうど歴史研究に興味を持ち始めた頃で、趣味の感覚で行っていた歴史調査(という名の旅行(笑))にフェローシップが加われば、自分のやっていることにメリハリができて良いのではないかと思い応募しました。
インスピレーションを得た作品は?
『「明治」という国家』

大平が留学したラトガース大学(2018年/アメリカ)

企画の着想はどこから?

私の場合は幕末の日本人留学生について調べたいという考えが先にありました。幕末を扱った司馬さんの作品を読んでいる中で、『「明治」という国家』に出てくる横井小楠に興味を持ち、また彼の甥が幕末にアメリカ留学しているということで、横井小楠の甥・横井大平にスポットを当てて調べることにしました。

留学中のソウルにて(2019年/韓国

受賞後の心境、生活の変化は?

フェローシップの調査のため訪れた先々では本当に様々な出会いがありました。それがきっかけで今も交流が続いている方々もいます。研究の面白さを存分に味わったのと同時にたくさんの方にお世話になり、たくさんの親切を受けることで、今度は私がお返しをしたい、人のために何かをしたい、と強く思うようになりました。

応募を考えている皆さんへ
フェローシップは成果を求めません。1年間で求めていた答えを得られなくても大丈夫なのです(と記念館館長さんが仰ってました)。短期的な成果を重視しがちな昨今、この精神は素晴らしいと思います。成果のためではなく本当に知りたいもの、自由な好奇心に従ってのびのびと探求する機会をぜひ掴みにいってください!
司馬作品との出会いは
高校生の時に友だちから『燃えよ剣』を勧められて読んだのが初めです。
おすすめの司馬作品は?
『花神』
幕末~明治の兵学者・大村益次郎を描いた作品。主人公は兵学者で近代軍制の創始者・・・と聞くと何やら厳つい小説のようですが、物語は思いのほか淡々と進みます。激動の幕末でありながら沈静を伴った、少し不思議な空気が味わえる作品です。

ある仏教彫刻のルーツを追って

企画タイトル:金剛峰寺所蔵の諸尊仏龕を請来したのは空海か?~

第3回 守屋さん
(受賞時・大学院生)

応募のきっかけは?
応募時は大学院に在籍中。大学の図書館でコピーを取っていたとき、コピー機の近くに貼ってあった募集のポスターがたまたま目に入りました。「自分の研究成果を世に出せるステップにできるかもしれない」と考え、応募しました。
インスピレーションを得た作品は?
『空海の風景』
企画の着想はどこから?

まずは司馬遼太郎氏の著作を調べ、自分の研究分野である仏教彫刻史に結び付けられそうな作品をピックアップしました。そして、それらを読み、そこから始まる研究過程(自分が取り組んでいる様子)を想像しました。これによって研究テーマがいくつか見えてきます。最後に、採用される(社会に受け入れられる)企画とはどんなものか、順調に進みそうなものはどれか、といった視点でテーマを選びました。

受賞後の心境、生活の変化は?

受賞のことが新聞に掲載されたため、周囲の見る目が変わったのを覚えています。そして、授与式の舞台に立ち、「自分は学問の道に進んでも良いらしい」という自信と「その自分を社会が見る」というプレッシャーを感じました。現在は学芸員として仕事をし、仏教 彫刻史や文化財の調査研究を行っていますが、受賞していなければ今の自分はないかもしれません。

応募を考えている皆さんへ
企画を考えることは、司馬遼太郎氏の作品に向き合うと同時に自分にも向き合うことになります。司馬作品に振り回されて自分のやりたいことを見失っても駄目。独りよがりに司馬作品を解釈して自分の考えを押し通すのも駄目。「司馬作品(ひいては社会)とは?」「自分とは?」という問いについて考え抜く、人生にとって良い機会となりますように。
司馬作品との出会いは
企画を立てるためにいくつか司馬作品を読んだのがきちんとした出会い。初めて司馬遼太郎氏とその作品に向き合いました。
おすすめの司馬作品は?
具体的作品を挙げるのは他の受賞者の方々に譲ります。

司馬遼太郎氏は小説、紀行、エッセイ、対談など数多くの作品を遺しています。「読んでみようか」と思うままにいろいろ 読んでみて、自分なりに感じ考えるのが良いと思います。その中で自分が感銘を受けた作品、何度も読み返したい作品、誰かに紹介したい作品などが現れれば、人生にとって光明です。さらに「なぜその作品なのか?」について考えると、「自分ってナンだ?」という アイデンティティに対する問いにも答えが浮かんできます。

先島を旅して、離島の経済を知る

企画タイトル:離島の『商い』実態調査-沖縄県・八重山諸島-

第3回 柏木さん
(受賞時・大学生)

応募のきっかけは?
朝日新聞に掲載されていた公募のお知らせ記事です。大学1年生の冬に行った沖縄県の八重山諸島に感動し、その旅で考えたこと、もっと知りたいと思ったこと、そして八重山諸島をもっと旅したい!という想いを込めて企画を練りました。
インスピレーションを得た作品は?
『街道をゆく 6 沖縄・先島への道』                       

日本最南端の碑(波照間島/2019年)

企画の着想はどこから?

八重山諸島への旅の後、島に関する様々な書籍を読み漁りました。その中で『街道をゆく 6 沖縄・先島への道』と出会いました。
先島の歴史的・文化的背景を知ると同時に、自分は、先島の何に視点を置いて捉えたいのだろうかという目的意識を持つことにつながりました。

受賞後の心境、生活の変化は?

フィールドワークを通して、私の大学生活は、こういうことをやってきたという「幹」となる経験ができたと思います。フェローシップとしての1年間の活動の後、海外の沖縄出身移住者のフィールドワークのために、南米に数ヶ月滞在する機会にも恵まれました。これも、フェローシップを通しての経験があったからこそ挑戦できたことでした。

八重山の海(新城島/2019年)

応募を考えている皆さんへ
懐深く、あたたかく長い目で、若者の知的好奇心を応援してくれる貴重な制度だと思います。やってみたいことを、企画書にぶつけてみる!ぐらいの気概で挑戦してみてください。
司馬作品との出会いは
『街道をゆく 6 沖縄・先島への道』です。(以外加筆)八重山を含む先島諸島については、民俗学者による文献が豊富にあります。『街道をゆく』は、民俗学者が伝える八重山とは毛色が異なり、司馬さんご自身の人間味や傾聴力が感じられたことが印象的でした。
おすすめの司馬作品は?
『21世紀に生きる君たちへ』
自身の子育てを通して、この子にはどんな風に育って欲しいのだろうかと考えるとき、司馬さんの人生のあゆみに裏打ちされた言葉のひとつひとつが迫ってきます。

焼き物の里に司馬さんの足跡を追って

企画タイトル
「『街道をゆく』から35年後の砥部焼の現状・愛媛文化の特徴について」

第17回 曽我さん
(受賞時・大学生)

応募のきっかけは?
友人からフェローシップの公募を教えてもらいました。
インスピレーションを得た作品は?
『街道をゆく14 南伊予・西土佐の道』                       

唐草模様の砥部焼。焼成すると縮み、青い色合いになります
(2014年、愛媛県砥部町)

企画の着想はどこから?

地元である愛媛県の伝統的工芸品・砥部焼の窯元を訪ねた司馬さんが、その作風に他地域にない個性を見いだしている点が気になりました。
その背景にはどんな歴史があって、どんな人が作っているのか。そして、35年がたった今はどう変化しているのか。次々に疑問が湧き、一気に企画を書き上げたのを覚えています。

受賞後の心境、生活の変化は?

フェローシップの経験をきっかけに、地元新聞社の記者になりました。出会った陶工の方々とは5年がたった今も交流が続き、作陶への思いを記事で発信しています。
今年度からは瀬戸内しまなみ海道沿線にフィールドを移し、島しょ部の文化や移住者の動きを追っています。慣れないことばかりですが、楽しく新鮮な毎日です。

瀬戸内しまなみ海道は愛媛自慢の絶景です(2019年/愛媛県今治市)

応募を考えている皆さんへ
何気ない好奇心で応募した企画が、私にとって大切な出会いのきっかけを作ってくれました。皆さんも司馬さんの大きな背中を追いかける気持ちで、お気に入りの作品からイメージを膨らませてみてください。
司馬作品との出会いは
小さいころから源義経が大好きで、中学生の時に読んだ『義経』が司馬作品との出会いでした。悲劇の英雄ぶりに熱を上げていただけに、政治音痴で涙もろい司馬さんの義経像は衝撃的でした。大人になって読み返し、弱さも抱えた人間くさい描写に、魅力を感じるようになりました。
おすすめの司馬作品は?
仕事につまづいた時には、記者時代のコラムやエピソードを紹介している『新聞記者 司馬遼太郎』(産経新聞社)をよく読み返します。司馬さんは記者の仕事を『梟の城』で描いた伊賀忍者になぞらえ「無償の功名主義」と表現しており、この言葉が大好きです。原点にある思いを胸に、歩み続ける勇気をくれる一冊です。

「弥勒神」の起源を求めて沖縄、中国、ベトナムへ

企画タイトル
「弥勒仮面が来訪した『海上の道』を探る 黒潮の流れに沿って『南波照間島』伝説から弥勒信仰へと結ぶ視点」

第6回 須藤さん
(受賞時・教職員)

応募のきっかけは?
ある新聞でフェローシップの募集記事を目にしたのが、応募のきっかけでした。それを手掛かりに、インターネットで司馬遼太郎記念館のホームページで詳細を知り、その日のうちに、企画書を書き上げました。司馬文学に更に深く関わることができる機会だと思いました。
インスピレーションを得た作品は?
個人的には『空海の風景』が大好きなのですが、フェローシップの企画は『街道をゆく 先島への道』を片手に八重山の島々を旅したことがきっかけでした。「南波照間島」(パイパティローマ)の伝説から弥勒信仰へと結ぶ視点から、「弥勒」が沖縄で方言化したとされる「ミルク神」の起源を訪ねました。弥勒神が来訪した「海上の道」を仮面や仮装・仏像を手がかりとして、沖縄諸島・中国江南・ベトナムに赴いて<弥勒イメージ>を調査しました。                       

沖縄諸島のミルク神(2006年/竹富島)

企画の着想はどこから?

八重山諸島の島々を訪れ、いろいろな仮面芸能と出逢いました。司馬遼太郎さんは竹富島を訪れて、『街道をゆく 先島への道』の中で見聞を残されています。竹富島や波照間島の祭祀では、「弥勒神」とよばれる仮面を被った神様が登場します。司馬さんは天候の為に波照間島に渡ることができなかったのですが、その随筆を読んで、竹富島からの旅の続きをしてみたいという想いに駆られたのです。

受賞後の心境、生活の変化は?

受賞した翌年から、沖縄大学の先生として、若い世代に「日本文化」や「宗教哲学」、「死生学」に関するテーマを教えています。また、島々の民俗文化を研究するために何度も通って、『久高オデッセイ』、『マレビト芸能の発生』、『神の島の死生学』といった本を書かせていただきました。
特に「現代日本人論」という科目では、司馬遼太郎さんとドナルド・キーンさんとの対談も取り上げて、「日本人とは何か」について学び合っています。沖縄では「日本人」よりも「沖縄人(ウチナーンチュ)」にアイデンティティを置いている方々が多いので、「日本人論」を考えることは非常に重要なことなのです。

上座部仏教の僧侶となった私(2018年/スリランカ)

応募を考えている皆さんへ
司馬遼太郎さんが20世紀に生きる若い人たちに伝えたかったことを、21世紀に生きる若い世代がリレーしていくことが重要だと思っています。
歴史から過去を振り返り、現在を生き、未来へとどう繋げていくのかを、司馬文学から学んでインスピレーションを受けることが、皆さんなりの「新しい歴史」を形にすることになると思います。
司馬作品との出会いは
『空海の風景』や『酔って候』が好きです。あえて一冊に絞るなら、メジャーでない『酔って候』が良いかもしれません。中でも土佐藩主であった山内豊信の豪快さや酒乱ぶりが魅力的です。多くの歴史小説では脇役となっている山内ですが、司馬さんはあえて主人公にしています。彼は酒好きで豪快な性格であり、漢詩にも才能があり、教養の深さを描いた物語となっています。
沖縄でも酒豪の方が多く、文化に関わる方々は酒をたしなみながら、夜な夜な熱弁を交わしています。ある組踊の継承者と私は、酒の席で琉歌と和歌を即興で交わし合ったりしていました。今は出家したので、そういう場には参加できませんけれども。
おすすめの司馬作品は?
「役の行者」。
おすすめの一冊ではないのですが、司馬作品で単行本に未収録の作品である「役の行者」を推薦したいです。夢枕獏さんが監修した『七人の役小角』という本の中に書かれています。司馬遼太郎記念館を訪れた時に、上村洋行館長からご紹介いただいたのです。主人公である「役小角」(えんのおづぬ)は修験道の祖と言われ、飛鳥時代に生きていたという人物です。宙を飛んで怪しげな術を使い、前鬼や後鬼を従えたといった伝説もあります。「熊野修験道」の調査を始めようと思っていたところ、その短編からインスピレーションを得ました。